奥津文夫『英米のことわざに学ぶ 人生の知恵とユーモア』

永野恒雄

以前、奥津文夫先生の『ことわざの英語』(講談社現代新書、1989)を読み、learnとstudyの使い分けを知って、「そうだったのか」と感心したことがありました。奥津先生によれば、learnは、知識や技術を学んで身につけたり覚えたりすることだが、studyは、読書や考察をおこない、あるいは学科目として勉強することで、結果が身についたかどうかは問題にしないのだそうです。

かつて私は、『ことわざの英語』を読み、ことわざについて大いに学ばせていただきました。この本は、私にとって、長くlearnの対象でした。

奥津先生の新著『英米のことわざに学ぶ人生の知恵とユーモア』を読ませていただきました。『ことわざの英語』とよく似た構成の本ですが、味わいは全くことなります。実に含蓄に富む本で、少し読んでは本を置き、人生について考え、また少し読んでは、そのユーモアを噛みしめるといった感じの本です。

特に、日本人は、人に「がんばって」と言うが、欧米人は、Take it easy!と声をかけるという話には、考えさせられました。私にとって、この本は、長くstudyの対象となる本になることでしょう。

もちろん、今回、この本によって、身につけた(learn)知識も、たくさんありました。そのひとつは、Gather ye rosebuds while ye may.(バラのつぼみは摘めるうちに摘め)という言葉です。この言葉は、『ことわざの英語』の最後にも、短く紹介されていますが、読んだときは気がつきませんでした。今回、この言葉を知って、「そうだったのか」と思わず膝を打ちました。というのは、映画史上、最高の傑作とされている『市民ケーン』(1941)で、カギになっている言葉が、このRose Budだったからです。この映画の主題は、まさに、「バラのつぼみは摘めるうちに摘め」なのです。

なお、本書のあとがきで、福沢諭吉の翻訳道歌についての私の拙い報告について言及していただいたことを、光栄に思い、また感謝したいと思います。(三修社、2011年)